敷居が低くなった債務整理
以前は多額の借金を抱えた相談者が最後の最後に債務整理を行い、自己破産や個人再生などを行ってきました。
ですが最近では債務額100万円以下の人が、弁護士などに債務整理の手続きの相談に訪れるようになり、中には30万円程度でも債務整理を申し出る人がいるという。
正規雇用が減り収入が激減しているのが原因と、年収の3分の1以上の借入はできないという総量規制に引っ掛かる為である。
ただ、そういった切羽詰まって申し出る人に限って決まって「自己破産したいんですが」と相談に来るらしい。
確かに自己破産し免責されれば借金はゼロになりますが、住宅など財産をすべて差し出さなければなりません。
後ほど説明しますが、債務整理 = 「自己破産」ではありません。
債務整理には種類があり、それぞれに特徴があります。
借金減額という目的は同じですが、その債務整理の方法によって返済額やメリット、デメリットなどに大きな違いがあります。
債務整理の種類と特徴
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | |
手続にかかる期間 | 約3~8ヶ月 | 裁判所への申し立てに約3~6ヶ月、申し立てから認可までに約6ヶ月 | 裁判所への申し立てに約2~4ヶ月、申し立てから免責までに約4ヶ月 |
借金の原因 | 不問 | 不問 | ギャンブルなどは認められない可能性あり |
借金の減額 | 金利を引き直したうえで、残った債務の金利が0%となり、3~5年の分割払いが可能 | 任意整理で得られる効果に加え、債務の大幅カットが可能 | 免責決定されれば借金はゼロ |
持ち家を手放さず整理が可能か | 可能 | 可能 | 不可能 |
借入が出来なくなる期間 | 約5~7年 | 約5~7年 | 約5~7年 |
官報などへの記載 | 信用情報機関に登録 | 信用情報機関に登録されるのに加え、官報公告にも掲載 | 信用情報機関に登録されるのに加え、官報公告にも掲載 |
費用 | 借入先1社につき3万~5万円程度 | 40万~60万程度 | 25万~35万円程度 |
職業による資格制限 | なし | なし | 免責されるまでの間、企業の取締役、警備員、弁護士、生命保険募集員などには就けなくなる |
1.裁判所に申し立て、免責を受けることで借金自体を免除してもらう「自己破産」
2.裁判所を通じて借金を5分の1、または100万円程度まで減額、残債無を基本的に3年で分割返済する「個人再生」
3.弁護士等に貸金業者との交渉を委任、利息の支払いを免除してもらい、原則として3~5年で分割払いする「任意整理」
上記の3つの方法が代表的です。
任意整理に関しては、グレーゾーン金利の廃止による過払い金の返還で返ってくる「過払い金」により返済額を減額させることができたり、借金自体がなくなる場合もあります。
債務整理のデメリット
まず、自己破産の場合ですが、借金の原因が問題になり、免責がおりずに借金がゼロにならない場合があります。
例えば、基本的にはギャンブルやFX、株式の売買が原因の場合は免責が認められません。
ただ、最近では1回目の自己破産ではギャンブルやFX、株式の売買により借金でもほぼ認められる傾向のようです。
また、住宅などの財産は手放すことが求められますし、免責が認められるまでは生命保険募集員や企業の取締役、弁護士、警備員などの職業には就けません。
また、信用情報機関に事故情報は記載されますので、5~7年はクレジットカードやカードローンを組むことは出来ません。
「自己破産」以外の「個人再生」「任意整理」では借金はなくなりません。
減額や元本になりますが、借金を返済し続けていく必要があり、返済が滞ると給与や資産の差し押さえの可能性もあります。
債務整理で「任意整理」を選んだ人の6~7割の人がその後の返済に失敗しているというデータもあります。
ですので、自分の債務の状況、収入等考えてまず弁護士などの専門家に相談してどの債務整理が自分に適しているのかを把握するのがまず第一です。