日本人の持ち家信仰と住宅ローン
「主人に死んでほしい。そうすれば生命保険で住宅ローンが完済できる。」
ローンに関する相談会で、60歳過ぎの女性の発言に場が凍り付いた。
発言の内容もさることながら、死んでほしいとまで言われたその夫が、女性の隣に座っていたからだ。妻の目は本気だった・・・
ビックリする話ですよね。
これは以前パンダが某雑誌で読んだ記事で、住宅ローン担当の銀行マンの談話として載っていました。
パンダが夫の立場で妻にそんなことを公衆の面前で言われたら、立ち直ることが出来ない程心にダメージを喰らうと思います。
しかし、日本人の持ち家信仰は根強く家のためなら死にもの狂いで返済するといわれ、「自分の命より家族に家を残すことを選ぶケースも見受けられる」(メガバンク担当者)くらい強いものだと言われています。
前述のその夫婦は売上1億円前後で、従業員が10人弱の中小建設会社を経営しており、少し前に銀行で住宅ローンを借りたが経営が厳しくなり、ローンの返済はおろか本業まで傾いてしまっていたらしい。
それでも女性は「主人の放漫経営が悪いので会社はどうなってもいい。ただ家だけはどうしても守りたい」と訴えたのです。
持ち家を守りたいと考えるのは、なにも女性だけの話ではありません。
ある男性は、住宅ローンの返済が厳しくなり、消費者金融やカードローンなどで借り入れをして返済に充てていた。
普通に考えれば、下手すれば桁が違う高金利のお金を借りて、低金利の住宅ローンを返済するのは全く合理性に欠けた行動です。
住宅ローンという債務を返済しているつもりが、実際には低金利のローンから高金利のローンへの借り換えを行っているだけで、返済額は減るどころか逆に増えていってしまっています。
この男性も「いずれは破綻する」と気づきながらも「住宅ローンはとにかく返したい」と消費者金融からお金を借り続け、借金は5社合計で280万円。
一方で住宅ローン残高も4,000万円以上残っているという状態です。
こうやって文章だけを読んでいると全くもって理解し難い話ですが、これが現実世界ではよくあることと言われています。
返済条件の変更、リスケジュール(リスケ)
前述のように、月々の住宅ローン返済がなんらかの事情により難しいとなった場合、金融機関と交渉して返済条件を変更してもらう方法があります。
これをリスケジュール(リスケ)と言います。
基本的には、
- 毎月の返済減額、元金返済猶予
- 返済期間の延長
といった方法で、貸し付け条件を変更してもらう形になります。
このリスケによって毎月の返済額を減らすことが出来て、住宅ローンを借りている顧客は一息つけるという訳です。
多くの住宅ローン返済に困った人たちが利用しているリスケですが、果たして顧客にとって本当に良いことかというと、一概にそうとも言えません。
このリスケには大きな副作用があることがあまり認識されていません。
リスケに潜む大きな副作用
- 毎月の返済減額、元金返済猶予
- 返済期間の延長
基本的に上記がリスケの方法と前述しました。
給与の減額等により家計が厳しくなり、3年間の元金返済猶予を行った場合を例にします。
元金返済猶予をするとその期間は1円も金融機関に支払はないと思われがちですが、そんな甘い話は世の中にはありません。
3年間の間は元金は返済しなくてもいいですが、金利分は払い続けなければなりません。
確かに、その3年間に限ってはローン返済に回すお金が減って、家計は楽になります。
しかし、リスケが期限を迎える3年後に大きなリスケの副作用が待っています。
住宅ローンの元金自体は減っていませんから完済年齢を変更しなければ、毎月の返済額がリスケ前よりも多くなってしまいます。
元金の返済猶予でようやく一息ついていた人が、リスケ前に支払えなかった返済額よりも多い額の返済を続けるのは、どだいむりな話です。
結果的に銀行に再度リスケをお願いするか、返済不能に陥って家を売らざるをえない事態になる場合が多いのです。
一方、返済猶予ではなく返済期間の延長をすることで月々の返済額を減らすリスケの方法をとった場合、月々の返済額事態は減り家計は楽になりますが、当然ながらローン残高が減るスピードは落ちます。
目先の苦しさから安易に返済期間の延長をすれば、定年退職後に悲惨な老後が待っていることになります。
いずれにしてもリスケは、目先の苦しさから逃れることはできますが、より大きな苦しみを将来に繰り越しているだけなのです。
こういったことを考えると安易に住宅ローンを組むことはせず、老後破産などのリスクを考慮して余裕を持った返済計画をたてなければいけませんね。